意地の張り合い30年 「犬の力」

メキシコの麻薬撲滅にやっきになる麻薬取締局の男と麻薬カルテルとの30年の長き渡る抗争のお話。前麻薬撲滅の大義名分で豪快なアクションが炸裂するが、それは導入部のみ。導入部以降、主人公の同僚がマフィアに殺されてからは、お互いにネチネチと「殺った殺られた」「裏切った裏切られた」と意地の張り合いとなる。

とにかく人が死にまくる。中心になりそうな人物が出てきては次々と血祭りに上げられるので、非常の俺好みであった。マフィアの皆様は、いつの時代も裏切り者に制裁を加えるにあたって、本人のみならず家族丸ごと惨殺する素敵な慣習がある。それは、ちょい役の軽薄なチンピラにも容赦することはなく、「何もそこまでしなくても良いのになぁ」と思うことしきりで、そっち方面では、お腹いっぱいになれる。

同僚を殺されただけで30年も復讐に人生を捧げ、突っ走り続ける根性。政府や教会まで巻き込んでの意地の張り合いは、ちょっと理解できないが、殺伐とした展開の末に得られる奇妙な清々しさはすばらしい。