利き手で剛速球「ドラゴン・タトゥーの女」


原作読了済み、スウェーデン版未見。
手クセでサラッと撮ったような映画だなあっというのが、まずの感想。友人とフィンチャーの映画は"利き手で撮った映画"と"そうじゃない映画"とでギャップがありすぎるという話で盛り上がったことがあるが、この映画は、どう見ても利き手のそれで、ご機嫌良く消化できている。

カレンOとトレントの「移民の歌」爆音オープニングはさておき、クソ寒そうな田舎の風景は、フィンチャー特有の凝ったセットや冷徹なショットにお誂えだ。もちろんトレント・レズナーアッティカス・ロスの一聴でそれと分かる、手癖フレーズと冷たい音色もしっくりくる。綺麗に計算された映画だった。

原作自体も冷静な描写が多いので、エモーショナルな部分が感じられなくても十分な感じ。逆にあれ以上やられると雰囲気が壊れる様に思える。元々のテーマである”虐げられる女”というテーマを浮き彫りにするにもちょうど良いかなと。

なんつーか、リスベットが強烈なのであんまり言うことねぇなあ。瞬時に複雑な思考を行うリスペットをルーニー・マーラは表情だけで見事演じているし、ダニエル・クレイグのチャラい中年具合も良い。
そもそも基本的にこの2人を愛でる映画で、ミステリとしては凡庸であるため本筋の重要性は低い。
ただ、ヴァンゲル家の人たちをもうちょっと濃ゆく描いても良かったような気がするが、概ね満足。

それからチューリッヒ空港の外観を移すショット。アレ、昔からある手法(にみえる)なのに、一瞬「パニックルーム」を思い出してしまい、俺、結構フィンチャー好きなんだなぁっと、笑ってしまった。