「冷たい熱帯魚」高いところから低いところへ流れる狂気


でんでん扮する村田があまりに魅力的なので、そっちに引っ張られる映画。ちょっと滑舌悪いところがまた、汎用化されてて良いよね。


「俺はプロだ!その辺にいるアマ公とは違う!自分をもっていないヤツはムカツクんだよ!バーカ!俺はいつでも、勝つ!勝つ!勝新太郎!」


空っぽのヤツが嫌いだと村田は言うが、村田自身は空っぽの人間を自らの狂気で満たし、サポート役に回して良いように使ってるんだけどね。社本にしろ、その娘の美津子にしろ、村田の嫁の愛子にしろ、みんな空っぽ。終盤になるとよく分かるが、愛子なんて本当に何も無い人間だ。貰った狂気を発散させていなかった社本だけは自分の中に取り込んだ結果、大爆発を起こしてしまうわけだ。

実際、変なテンションに引っ張られる人は、中身空っぽのやつが多い。んで、大概、そういう空っぽ人間を取り込むのは、村田みたいなヤツだ。ほれ、マルチにはまるヤツとかいるでしょ?「目立たなかった同級生から突然連絡があったと思ったら、アム公*1に変身してました!」みたいな。渋谷のアムアム御用達茶店あたりに行けば、そんな貴方の同級生を量産している村田みたいなテンションのヤツ、結構居るぞ。

マルチの親な人が発するような、キモイ超絶ポジティブシンキングベクトルがダークサイドに落下した結果が村田なんじゃなかろかなーっと。村田のやってることは洒落にならんくらい異常なんだけどね。良くいるよね、あぁいう感じのオッサン。

もう少し言い方を変えると、村田のそれは、モーレツ自己啓発セラピーである。社本なんて結果的には、完全に癒された状態を迎えるわけで。

なんだか下らない事を書いてしまいましたが、なーんの希望も残らない素晴らしい映画でした。もちろん、でんでんさんだけでなく、吹越満のカツカツな演技も最高です。あと西村映造さんの技術力がもっすごいあがってますね。すごい!

悪魔を憐れむ歌

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