孤独の金太郎飴「ハンナ」
ニキータや片目の女、ヒットガールなど暗殺マシーン女は数あれど、ハンナほど孤独なマシーンは今まで居なかったであろう。なぜなら彼女は正確には人間ではない上に、過去も存在しないからだ。
彼女はある事情により、あらゆる感情の抑制力が強い。だから育ての親が消えようが、優しくしてくれたオッチャンが拷問死しようが、あまり悲しみを感じていないように見える。詳細は語られていないが、たぶん本当に感じていないのであろう。彼女が涙を流すのは、母親の仇、にっくきマリッサ・ウィーグラー*1(の影武者)を捻り殺すときの偽の涙だけだ。
ヒッピー気取りの一家との友情や、モロッコでの音楽との出会いを通して世界に触れたハンナの何かが変わったようにも見える節があるが、作品の最初と最後に観られる無感情なシーケンスをみるにつけ、僕には何も変わっていないように思えた。変わったことといえば、彼女を知る人が誰もいなくなったということだけだ。
バッキバキの電子音と不安定なロックがゴタゴタになったケミブラの曲*2と同じで、彼女の心もゴタゴタのままなんじゃないだろうか。
*1:ケイト・ブランシェットは、クソアマ役が映えますな。
*2:本作は音楽に頼りすぎだ